2017年12月7日

【プレスリリース】350.org 有力経済学者が化石燃料への投融資の中止を求める宣言を発表

プレスリリース

2017年12月7日

350.org 有力経済学者が化石燃料への投融資の中止を求める宣言を発表

 

米国の経済学者のジェフリー・サックス氏を含め、世界20カ国から80人以上の世界的に名を馳せている経済学者が、フランスのエマニュエル・マクロン大統領主催でパリで行われる「気候変動サミット(One Planet Summit)」の開催に先駆けて、化石燃料への新たな投融資を直ちに凍結し、それらの資金を再生可能エネルギー開発へと急速に移行させることを求める「気候変動ファイナンス宣言(Declaration on Climate Finance)」を発表しました。

日本からは元地球環境問題担当特命全権大使の西村六善様を含む4人がこちらの宣言に賛同していただいております。

「パリ協定」採択から2年である2017年12月12日に開催される「気候変動サミット(One Planet Summit)」では、気候変動ファイナンスの動員に焦点が当てられます。しかし、残念なことに2年前にコミットされた目標と逆行するかたちで、公的および民間の金融機関は化石燃料への投融資を続けています。化石燃料開発事業や関連企業への投融資は、地球環境やその人々、さらに経済にも悪影響を及ぼします。

「国連環境計画(UNEP)によると、現在、世界20カ国以上で約900の気候変動関連の訴訟が起きています。被告は国や企業であり、共に温暖化対策の不作為は大きな訴訟リスクを持つことを認識すべきです。その意味で、化石燃料ビジネスへの投融資は完全にアウトです。時代は大きく変わっています」と宣言署名者である東北大学の明日香壽川教授は述べています。

 

  • 科学界からの警告に対し経済学者が応答

この宣言は、地球を救うためには緊急な行動が必要だと、世界184か国の科学者1万5000人以上が署名した書簡「人類への警告」への応えとしてまとめられました。

IPCC第5次評価報告書などの調査によると、現在継続中の化石燃料開発によって生じるCO2排出量だけでも、安全な状態をはるかに上回る気温上昇は避けられません。だからこそ、気温上昇を2℃未満(そして可能な限り1.5℃に近づけるよう)に抑えるという目標とは相反する、化石燃料の新規調査や開発はもちろんのこと、既存の化石燃料プロジェクトも、資源が自然に減少するのを待つのではなく、急ピッチで段階的に廃止することを意味します。

「2025年までに炭素排出量が急速に減少すると見込まれる場合、化石燃料に対する補助金の廃止などの方針転換に伴い、再生可能エネルギーへの融資が大幅に増加する必要があります」と米タフツ大学グローバル開発・環境研究所のニーバ・グッドウィン・ロックフェラー共同ディレクターは語ります。

 

  • 化石燃料関連の資産はもはやリスクが高い

今年の初旬に国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency )は、さらなる気候変動対応策の実施、および再生可能エネルギーの利用の増加によって石油・天然ガス資産につぎ込まれている合計1.3兆米ドル(約145兆円)が無駄になるリスクを冒しているという勧告を発しています。 先月、石油掘削より財を成してきたノルウェーの政府年金基金は、石油・ガス株を除外することを検討していると発表しています。

これらのいわゆる「座礁資産」や気候変動関連リスクがあるからこそ、多くの投資家並びに機関投資家がすでに石炭、石油、ガスなどの化石燃料に依存する企業から投資撤退(ダイベストメント)をしている大きな要因です。大学のキャンパスから始まった化石燃料ダイベストメント運動は現在、運用資産総額5.57兆米ドル(約624兆円)を超える機関投資家や団体が形成するグループへと拡大しています。

「2℃目標を前提にすれば、新たな化石燃料の開発投資とは、長期的に見て座礁資産に投資することにほかならず、単に非倫理的なだけでなく、経済的にも不合理です」と高崎経済大学の水口剛教授と分析しています。

 

  • 脱化石燃料に動く世界:日本の対応遅れ

世界が脱炭素経済に向かっている中、日本の公的・民間金融機関の気候変動対応は遅れが目立ちます。現に、日本の公的・民間金融機関は気候変動を加速させる化石燃料に巨額の資金を投入しています。米国の自然資源防衛協議会(NRDC:Natural Resources Defense Council)によると、日本はG7加盟国の中でCO2排出量が最も多い石炭へ最大の公的支援を行っていると指摘されています。世界の主要NGOグループが発表した、世界の主要銀行37行の気候変動対応を評価した報告書では、日本の3大メガバンクは中国の4行がそろって「落第」を意味するF評価を受けています。

世界の経済学者は、2018年が化石燃料から100%再生可能エネルギー社会への移行がさらに加速する年となることを期待しています。今年の11月に国際エネルギー機関(IEA)が発表した最新の「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」では、2040年までの発電所への世界的な投資の3分の2を再生可能エネルギーが占めると予測しています。

化石燃料から再生可能エネルギーへの世界的な移行は、人類史上最大のビジネスチャンスの1つになるでしょう。 日本はその機会を見逃さず、世界経済の脱炭素化に貢献すべきです。

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▶︎350.org Japanについて  

350.org Japanは、米国ニューヨークを拠点にもつ350.orgの日本支部です。当団体は、化石燃料ダイベストメントを日本で広めるために、2015年4月に設立されました。温暖化を加速させている化石燃料関連企業や、国民の安全や健康を危険にさらす原発関連企業へ投融資をしていない「地球にやさしい銀行」選びを消費者に促す キャンペーンを現在展開しています。

 

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棚尾真理絵 350.org Japan 広報

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