昨日、南極大陸から三重県の面積とほぼ同じ大きさの氷の塊「ラーセンC氷棚」が分離しました。今年の1月に氷の亀裂が急速に広がっていることが確認され、英国の南極研究所による観測が続いていた中、ついに分離が起こりました。

「ラーセンC」は南極半島東岸に存在する「ラーセン氷棚」の一部でした。「ラーセン氷棚」はかつて、四つの氷棚によって構成されていましたが、「ラーセンA」は1995年そして「ラーセンB」は2002年に崩壊しています。

面積約5800平方キロメートル、重さ1兆トンを超える「ラーセンC」が分離したことによって、観測史上最大級の氷山が形成される見通しだと南極研究所は発表しています。

何百メートルにも渡る氷の亀裂は高い絶壁となり、 過去数千年の歴史上初めて、氷の下からダークブルーの海が見えるようになったのです。

1950年代に比べ、ラーセン氷棚のある地域は気温が約3℃上昇しました。 南極半島はの今の環境は、そう遠くない地球の未来の姿を映し出しています。これまで地球に繁栄をもたらしてきた比較的安定した気候から、手のつけようがないメルトダウンが相次ぐ地球の未来の姿ーー世界中に広がる3℃の気温上昇とは、誰にも想像ができない深刻な影響が起こるということを意味しています。既に、干ばつや飢饉、海面上昇、大型台風の頻発、山火事などの自然災害が私たちの日常の一部となり始めています。

ラーセンC氷棚の崩壊は、単なる自然現象として片づけてはいけません。その背景にはCO2 を排出し続けてきた人間活動、そして気候変動の事実を隠蔽してきた企業戦略などがあります。

その一例として挙げられるのが、石油世界大手のエクソンモービル社による温暖化問題の隠蔽戦略です。同社は地球温暖化が一般的に知られるよりかなり以前の70年代に、その影響を認識し、対応策も研究していたにも関わらず証拠隠滅に走り温暖化懐疑論を長年発信してきたことが最近明らかになりました。そのニュースはたちまち問題となり、ニューヨーク州の検事総長が、国民と投資家に対してエクソンモービル社が意図的に嘘を繰り返してきたかどうかについて捜査を開始するまで発展しました。

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[上図:ハンブル石油(エクソンモービル社の旧名)は1962年「ハンブルは700万トンの氷河を溶かすほどのエネルギーを毎日供給している!」と謳う広告を出していた]

気候変動問題の解決において、エクソンモービルのような化石燃料会社が大きな責任を負っていることを協調するために、350.orgは7月10日に「ラーセンC」の分離よって生じる氷山を新たに「Exxon Knew 1(エクソンは知っていた第一号)」と名付けるように1万人の署名を南極地名委員会に提出してきました。

温暖化が進行していることは変えようのない事実であり、国際社会が合意した「パリ協定」に基づいて気温上昇を1.5〜2℃未満に食い止めるためには、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料埋蔵の最低8割は燃やさずに地中に留めておく必要があります。

科学者たちは、ラーセンC氷棚の分離によって、南極大陸の他の氷が非常に不安定になり、氷の崩壊が続くことで海面上昇につながる可能性があると指摘しています。 私たちは、危険な石炭や石油、天然ガスを採掘する計画が、氷棚が崩壊するように、同じく崩れることを願うばかりです。

南極のように地球全体の気温上昇が3℃を超えるのを防ぐため私たちにできることは、CO2排出量の最も多い化石燃料産業を支援する銀行から預金を引き揚げ、自然エネルギー社会の実現を支える銀行を応援することです。350.org Japanでは、My Bank My Future キャンペーンを通じて、日本の民間銀行に環境に配慮した投資や融資を行うよう呼びかけています。詳しくはウェブサイトでご覧ください!