米国のトランプ大統領が気候変動に関する「パリ協定」を脱退する方針を表明したのが、1年前の今日です。幸いにその表明は、米国全土そして世界において自治体、企業、市民団体からの気候変動対策に対するコミットメントや行動をむしろ促進する起爆剤となりました。

昨年のトランプ大統領のパリ協定離脱の発表を受け、
在日米国大使館前で行った緊急アクション

今では、ニューヨークやロンドンのような世界の大都市、大学、年金基金や政府系ファンドが、化石燃料からのダイベストメント(投資撤退)をどんどん推し進めています。ニューヨーク市に至っては、5大石油会社に対して気候変動による被害の責任を追求する訴訟を起こしていて、パリ市も同様のことを検討をしています。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が出した最新の報告書では、2020年には再生可能エネルギー発電コストが化石燃料火力発電コストを下回ると示しています。

先月、この脱炭素化の動きを米国で後押ししている350.org共同創設者、環境ジャーナリストのビル・マッキベンが「脱化石燃料」の重要性を訴えるアジア太平洋講演ツアーの一環で来日しました。日本に滞在している間、ビルは世界の脱炭素化の潮流、特に化石燃料ダイベストメントのムーブメントについて様々な場で語りました。

同時に、日本で新規の石炭火力発電所の建設が40基も計画されていることや、日本の3大メガバンク(三菱UFJ、みずほ、三井住友)が石炭火力発電事業に巨額の融資を行っている現状について知り、メガバンクに対して石炭関連企業への新規融資停止を求める国際署名への参加を呼びかけました。

5月10日に東京で開催されたセミナーの様子

大きな公開イベントは東京と横浜で行われ、その一つは銀行口座をダイベストメントした横浜市戸塚区の善了寺の本堂で開催されました。ビルは、気候変動というどれほど大きな危機に私たちが瀕していて、それを解決するには一人で行動するのではなく、共に行動し最大の変革をもたらすことが大事なのだということを来日中一貫して訴え続けました。

5月11日に横浜市の善了寺で行われたイベント

来日を終えたビルから日本の皆様へのメッセージをご紹介します。

「今回の日本訪問は、私にとって特別な経験でした。世界第3位の経済大国において、どのような活動が展開されていて、それがどのような進歩をもたらしているのかを目の当たりできました。350.org Japanは本当に日本で「ダイベストメント」というアクションを根付かせているのだなと感じました。「ダイベストメント」がどれほど不可欠で理にかなったアクションなのかを証明することが、日本の石炭からの脱却を促す鍵だと私は考えています。私は日本での経験について書いたり話したりすることを通じて、世界に日本に関する情報を届けるという役割を果たすつもりです。 コンセンサスと秩序を大切にする日本社会において、アクションや行動をとるというのはなかなか難しいかもしれません。しかし、コンセンサスが大事であるからこそ、日本が動くときには大規模な変化が急速にもたらされるのではないかと私は信じています。近い将来に、皆さんをもう一度お会いすることを楽しみにしています!」

ビルが来日している間、大手生命保険会社の第一生命が海外石炭火力発電への新規融資を中止することを宣言しました。そして先日、メガバンクの三井住友と三菱UFJの社長が石炭火力発電に対する融資方針を厳格化していくという発言をしたと報じられています。日本でも少しずつダイベストメントの兆しが見えてきたと言えると思います。しかし、気候変動による深刻な影響を避けるためには、私たちは石炭への支援の「厳格化」だけでなく、完全の撤退を求めてメガバンクへの働きかけを継続的に行う必要があります。

350.org Japanとして皆様の声をメガバンクに届けることで、このような変革を促していきます。

3大メガバンクの株主総会が開催される6月下旬までに1万人の署名を集めています。日本の銀行が石炭の問題に敏感になっている今こそ、一人でも多くの署名を銀行に届けることが重要になってきます。きれいな青空、そして安全な気候を守るために、ぜひ3大メガバンクに石炭火力発電や石炭採掘事業への新規融資停止を求める署名にご協力ください!詳しくは署名ページからご覧ください:http://world.350.org/ja/divest_from_coal_ja/