このブログは350.org Japanのイベントに参加した、ICUの学生小南菜月さんによって書かれたものです。


ICUには環境系のサークルや団体が企画を催し、学生が環境について考える機会を持つE-weeksと呼ばれる週間があります。

私はその期間中に、環境研究の授業のレポートを書くため350.org Japanのみなさんによる特別企画に参加しました。「『ダイベストメント』って何?」というタイトルで、参加する前の私はまさにダイベストメントとはいったい何だろうという気持ちでした。ダイベストメントとは、気候変動への懸念から化石燃料に関わる企業への投資をやめることです。日本ではほとんど知られていませんが、世界では40か国約500団体が取り組んでおり、その中には大学も多く含まれるのですが、その理由は企画の最後にわかりました。

はじめに気候変動を緩和させるために個人ができる取り組みを出し合いました。CO2を減らす、リデュース・リユース・リサイクルをする、節電する、自然エネルギーを利用する、植林する、地産地消などが挙げられました。

ダイベストメント運動が世界的にかつてないほどの盛り上がりを見せている背景には、2015年パリで行われたCOP21で産業革命前からの気温上昇を2℃より十分に低く抑える目標を掲げた上、さらに1.5℃以内と、より厳しい水準へ努力するという採択がされたことがあります。現在その1.5℃を守るために「あとこれだけ炭素を排出できる」という炭素予算はCO2換算で243ギガトンだそうです。そして現在地中に埋蔵が確認されている石炭などの化石燃料からの換算量は3670ギガトン、現在世界の年間排出量は40ギガトンです。つまり埋蔵量の90%以上は使えず、今のペースで排出を続けると6年で気温が1.5℃上昇してしまいます。

このように地球温暖化は急速に進んでおり、現在もカナダのフォートマクマレーでは山火事の時期が2か月早まり、5月10日にはソロモン諸島の島が5つ沈没したという報道があったそうです。そこで個人がそれぞれで行動しているだけでは足りない、もっと大きな組織を動かそうと立ち上がったのが350.orgです。

日本の大手銀行は石炭を含むに関わる企業へ莫大な投資をしていて、私達も知らず知らずのうちに地球温暖化に加担していること、同じように投資を行っている大学があることを初めて知り、驚きました。しかし、大学では情報を開示してくれないところもあるらしく、実際には状況がわからないそうです。

この企画で最も刺激を受けたのが、アメリカのスタンフォード大学でダイベストメント運動をしている二人の学生JosephとEmily、現在オーストラリア350.org職員で自分の母校にダイベストメントを行っているRayとSkypeで話したことです。スタンフォード大学では生徒の投票で75%の賛成を得て石炭関連企業への投資をやめることを大学が決め、今は次のステップに向けて模索しているそうです。

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ICUの学生が、大学が投資先の情報を開示してくれない場合はどうしたらいいか尋ねたとき、「私達も同じ状況だったけれど、化石燃料に関わる企業をすべてリストアップしてそこへ投資しないよう大学に言ったよ。」と答えてくれて、なんてパワフルな学生達なのだろうと思いました。

アメリカやオーストラリアでは学生達が大学でデモをしたり、学長室の前に張り込んだりしてダイベストメント運動を展開しているようです。日本では考えられませんが、彼らはそのような日本でこそデモなんて起こったらインパクトが大きいのではないか、と話していました。なぜダイベストメント運動に関わるようになったのか聞くと、節電やリサイクル、研究なども大事だと思うけれど、そういったことはもう何十年もやっているのに状況は変わらない、市民が一体となってトップの決断に直接影響を与えたいと思ったからだそうです。

Rayの話にはさらに感銘を受けました。彼は学生時代、気候変動について調べるため奨学金を受けてモルディブから来ていたAdamと友達になったそうです。大学1年生のころRayは自分の大学が気候変動などについての勉強を教えているにもかかわらず石炭、化石燃料の会社に投資をしていて憤りを覚えました。水没の危機にさらされているモルディブから来たAdamもがっかりしてしまいました。親友が祖国を失ってしまう、彼の子どもは住むところもなく難民になってしまう、と思ったRayは自分が立ち上がるしかないと考え、ダイベストメントを始めたそうです。オーストラリアでは政府の情報開示法によって大学が情報開示を拒否できないようになっているそうです。E-weeksで参加した他の企画では個人個人が環境のことを考えてできることに焦点が当てられていましたが、その一方で、権力を持つ組織にはたらきかけるくらいしないと地球温暖化の状況は変わらないのかもしれないと危機感を覚えました。13173688_1704365683152292_1498577644416387045_n

大学でダイベストメントが行われる理由は、大学の求める学生像とダイベストメントの目的に重なる部分があるからだという話が出ました。正直、大学の教育理念や目指す学生像は文面で読むだけで深く考えたこともありませんでしたが、ICUが掲げる「信頼される地球市民を育むリベラルアーツのグローバルな展開」を考えてみると、自分もICUの学生として海外に目を向け、地球に目を向け、行動を起こさなければならないと思いました。デモをしたり実際に投資をやめさせたりすることだけではなく、今回のようなイベントを通じてもっとたくさんの人にダイベストメントについて知ってもらいたいとのことだったので、今回の体験を周りの人にどんどん話したいと思っています。

E-weeksのイベントで刺激を受けて自分も今後ダイベストメントに関わりたいと思うようになり、先日初めて350.orgのミーティングに参加させていただきました。一方的に話を聞くだけでなくグループごとに質問を考えるなど、とても参加しやすい雰囲気で居心地が良かったです。また、海外の方も参加していたので、本当に地球規模のことについて考えているのだ、という実感がありました。議題の一つに、新しいキャンペーン”My Bank My Future”が出てきました。2017年9月までに信用金庫・地方銀行・労働金庫を中心に3つの銀行にダイベストメントを表明、もしくは化石燃料・原発投資を行っていないことを宣言してもらうことを目指すキャンペーンです。E-weeksで聞いた話の中で最も衝撃だったことの一つが、自分の預金が化石燃料・原発関連企業へ投資されていたことなので、このキャンペーンを通して、私のように自分が銀行に預けたお金の行方など深く考えたことがない方に現状を知ってもらいたいです。

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